【お役立ち情報メニュー】永久脱毛で無駄毛の心配はもう無いブログ:17年11月13日
「今日はお客様がみえるからお茶出ししてね。できる?」
母から突然言われたのは、小学三年の秋。
お客様とは、母のお兄ちゃんの嫁。
あたくしとは血のつながりはないが、
もの静かで上品な伯母が、あたくしは大好きだった。
はりきって、お茶の入れ方出し方を教わった。
伯母が到着して座敷でごあいさつをすると、
おもむろに母が目くばせをした。
よし!と台所で、あたくしは教わった通りに急須にお湯を入れ、
茶葉を蒸らしている間に、お盆に木の茶托をのせ、
あたためた湯のみをのせて、お茶を注いだ。
湯のみに八分目。
濃すぎず薄すぎず…自分としては完壁だった。
得意気にそっと、伯母の前に差し出したが
あたくしは緊張して、茶托の上で少し湯のみがカタカタ鳴った。
「まあ、嬉しいわ!ありがとう、いただくわね」
にっこりして伯母が湯のみを手にした瞬間、
あ!と自分の顔がサーッと冷たくなるのを感じた。
注意して入れたつもりだったのに、
茶托にお茶がこぼれてしまっていたのだ。
あろうことか、
湯のみといっしょに茶托が持ち上がるのを見た瞬間、
思わず目をつむったあたくしの頭の中に…
次にくるであろう光景がパパーッと、
早送りの走馬灯のように浮かび上がった。
…湯のみにくっついて持ち上った茶托は、
カチャーンと音をたてて落ちる。
困ったような伯母の顔。あわてる母。
ふきんを手にする母の姿まで思い浮かび、
あたくしはさらに強く目をつむった。
しかし…あれ?
あたくしが恐る恐る目をあけてみると、
なんと茶托は、伯母の左手の上にあった。
落ちる寸前、伯母はすばやく茶托を受けとめていたのだ。
そして、普通に静かに、お茶を一口飲み、
「まあ、おいしい」
と、言ったのだった。
あたくしは嬉しさと安堵と、
気はずかしさで何ともいえない心持ちだった。
――――――以上で今日の報告を終わります。